言葉を知らない少年
2015/05/03
1828年5月26日、ドイツのニュルンベルクで一人の16歳ほどと思われる少年が発見された。
当時靴屋を営んでいた一人の男が少年が佇んでいるのを発見し、声をかけたが何を聞いても『分からない』の一点張りであった。
自らの情報を拒むというよりはむしろ言葉を知らないようであった。
少年の足は切り傷が沢山ついていて山の中を歩いてきたかのようだった。
男は少年が足にけがを負っていることに気づき足に目をやると少年の足は異様とも言えるほどに青白かった。
言葉を話せない少年は不審に思われ警察へと連れていかれた。
少年は2通の手紙を携えており、その2通のうちニュルンベルク駐屯の騎兵隊中尉にあてられた1通には間違いだらけの文章で、手に余ったらこの少年を殺してほしいこと、この少年の両親はすでに死んでいることなどが記されていた。
少年は警察で一枚の紙とペンを渡され、そこにみずから「カスパーハウザー」とだけ書いた。
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カスパーの保護者となった法学者として著名なアンゼルム・フォイエルバッハは肉などを少年に与えたが全く受け付けず、食べると吐いてしまったという。
口にできるものと言えば水かパンくらいなもので、鏡に映る自分を捕まえようとしたり、火を手でつかもうとしたりとおよそ人間とは思えぬ行動をとった。
カスパーのうわさはたちまち広がり、多くの学者が少年に興味を持ち、正しい言葉が話せるようにと正しい教育がなされた。
初めはほとんど人間の言葉をしゃべることができなかったカスパーであったがその成長は凄まじく、数か月後にはたどたどしいながらもしっかりとした受け答えができるようにまでなっていた。
また、カスパーは当初は常人ではとても考えられないほどの鋭敏な五感を有していた。
その鋭敏な知覚能力は暗闇でも聖書を読めたり、金属を握るだけでその金属の種類が何なのかがわかるほどであったという。
しかしその人間離れした感覚も人間の生活に慣れるうえで徐々になくなり人間並みになっていった。
このようにして特異な才能のせいかカスパー多くの人々に知れ渡るようになっていったある日、何者かに突然襲われこの世を去った。
1833年12月17日のことであった。
司法解剖の結果カスパーは短剣のような刃物で肺と肝臓を貫かれていた。
カスパーが言葉を話せるようになったことで彼がどのような生活をしてどのような経緯で言葉が話せないという状況になったのかを知ることができると期待されたが、『何年もの間地下牢のような暗い場所で一人閉じ込められていたこと』などわずかな証言しか得ることができないまま殺害されてしまった。
この暗殺はまるでカスパーが言葉を話せるようになって幼いころのことを話すのを阻止するかのようなタイミングであった。
この奇妙な少年の話は今日に至るまで様々な憶測を生んできた。
100年ほどたった今現在も解明されていない19世紀最大のミステリーの一つである。
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